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あの八重のこと

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今年もあと数時間・・・。


多くの方がブログで今年のまとめなどをされていますが、私もそれに倣って今年最後のブログを締めたいと思います。


で、やっぱりこのテーマしかないなと考えたのが、昨年から出回っている落合けいこさんの八重をパクったと疑惑のあの八重咲きの市販品種のこと。

某種子系八重咲き品種


2か月ぐらい前のことになりますが、遂にお店にあの八重咲き品種が入ってきました。


種子繁殖ですので、いろんなタイプが混ざっています。

花絵本
花絵本
花絵本
花絵本

花絵本

同時に、落合けいこさんの「花絵本」の八重咲きも入ってきました。

フェアリーチュール
フェアリーチュール
フェアリーチュール
フェアリーチュール
フェアリーチュール

フェアリーチュール


また、ミヨシさんのメリクロンの八重咲き‘フェアリーチュール’も入ってきました。


ご存知だとは思いますが、ミヨシさんの‘フェアリーチュール’は落合けいこさんの最上級の八重咲きをメリクロンで増殖したものです。



日は前後しますが、別のお客様からこんな質問。


「これってとても似ているけれどどう違うの?」


「これって落合けいこさんの八重咲きとおんなじだと思うんだけど?」


同じコーナーに並べてあり、それらはとても良く似ています。試しに「花絵本」とあの八重のラベルを差し換えてみると・・・、


まあ、なんと言うことでしょう。ビフォーアフターでどちらがどちらか全くわからなくなりました。


今度は‘フェアリーチュール’でやってみると、こちらもまあ、なんということでしょう。


私はリコリスの観察もしています。黄色いリコリスは1種だけで見ると判別がつきにくいですが、並べて比較してみると同じように見えてもそれらの違いというものが見えてきます。


しかし、この場合、並べて比較してみてもその違いが見えてこない。おまけにラベルを抜いてしまったら全く判別が付きません。


もうこれはまったく同じもの。あの八重は落合けいこさんの八重咲きと同じものと判断するしかありません。


元々の落合けいこさんの八重咲きに別の系統を掛けて八重咲きを再現したのならば、少なからず違いが出て来るもの。


でも、それすらありません。ですから、元々の落合けいこさんの八重咲きから採種したものと考えられます。


おまけに‘フェアリーチュール’に似たものもあるので、これからも採種している可能性があります。


今年一年、情報収集みたいなことをやっていまして、見本市であの八重の展示ブースで直接、担当者から説明を受けたという方数名にお話を聞くことが出来ました。これらの方は落合けいこさんの八重を知っている方です。


皆さん一様に「落合けいこさんの八重ではないのか?」と聞かれたそうですが、担当者のしどろもどろと半ば居直りの説明にうんうんと頷きながらもおなかの中では「こいつやりやがったな」との思いを強くしたとのことでした。


また、業界関係者に聞いたところ表立っては言わないが、いわば業界のタブーを犯したと伝わっているとのことでした。


日本のパンジー・ビオラのトップブリーダー。八重咲きに関しては世界的なブリーダーの系統から種採ってのそのまんまを自分が作ったんだと言っているわけですからタブーもタブーですよね。


落合けいこさんと以前話したことがありますが、種採っちゃいけないってことではないんです。


「パンジー・ビオラは一年草。誰かが種を播かなければそれで終わりになってしまう。ただ、販売するにはせめて3代は種を採りなさい」


3代採れば花は変わるってことですね。それに違う血を入れればまた変わる。


つまりは、「楽して儲けようとするな!」ってことです。これ、一番トラブルの元です。


ブリーダーとして自分の作品を「創意工夫の目的がなく使われるのは大嫌い!」ってことです。私も同感です!


本当によろしくないことですが、私的にはもっとよろしくないと思えることがあります。それはあの八重のキャッチコピーと説明文です。


何か勘違いされているようです。


結論から言いますと、外国では多弁の八重咲きの育種の歴史はありません。


以前、栃の葉書房の「山野草マニアックス」に「平成三色すみれ考」として八重咲きについてその歴史を書かせていただきました。その際の資料として参考にさせていただいたのが「PANSIES,VIOLAS AND VIOLETTAS THE OMPLETE GUID」です。


これは、本家で書かれたパンジー・ビオラを網羅した高度な専門書ですが、そこには八重についての記載はまったくありません。専門書にないのです。


三色すみれ考で資料として挙げているのは、ミヨシの研究員さんから提供を受けたものです。これは‘フェアリーチュール’の種苗登録のために、探して探してようやく見つけ出されたもの。


つまり、それくらいの資料しかないのです。


八重咲きの育種が行われていたのならば、当然専門書にも他の場面でも記録は当然残っているはず。それがないのは八重咲きの育種がおこなわれていなかったことを意味します。


ではなぜ外国では八重咲きの育種がなされなかったのでしょうか?


答えは簡単。「美しくないから」です。


「え?、多弁の八重咲きって綺麗じゃない!」と思わる方も多いでしょう。それは、落合けいこさんの完成された八重咲きを見ているからです。


パンジーの基本の美の基準は「整形」、つまりは円環などの整った形。これが聖なる形として追及されてきました。


八重の発生の兆しは花弁の乱れ。最終的に落合けいこさんの八重咲きに到達するのがわかっていたら別だったかもしれませんが、整形を美とする基準ではまず外されてしまいます。ですから、八重咲きに至らなかったとも言えます。


でも、花を豪華にしたいとの欲望もある。原種のシンプルで素朴な花をより大きく豪華にしていくのはほとんどの園芸植物のながれですから。


そこで、整形で豪華にと発達した花型が「フリル」です。


フリルの育成過程は詳しくわかっていませんが、少しの花弁の揺れを拾い上げていったものと考えられます。


そして、より揺れを追及し、蓄積し、細かく襞が揺れる「フリンジ」を作り出しました。豪華そのものの花型です。


外国にとってはこのフリンジこそが八重。その証拠にこのフリンジ咲きのパンジーを「八重咲きパンジー」と称して販売していたではないですか!


また、こちらはしべが正常なので、種子が採れ系統も維持できて合理的です。


これが八重咲きの歴史です。


さて、キャッチコピーでは外国の歴史の中で八重咲きがたびたび登場するような印象を受けますが、事実はそうでないことがお分かりでしょう。


また、「遥か昔のイギリスで育種家が苦労し開発した奇跡の花」とありますが、八重咲き自体がないのにそんな人物が存在するわけがないのもお分かりでしょう。


そして、「伝説のパンジー」とありますが、多弁の八重咲きに全く興味もあこがれもないものが、伝説になりうるわけがないのもお分かりでしょう。


多弁の八重咲きは日本において作出が始まり、落合けいこさんによって完成されたのです。


日本人の世界に誇れる業績なのです。


それをさもイギリス人がやったもののような表記。知っている人であればスルーもしますが、そうでない方は信じてしまいます。


朝日新聞ではないんですから、国益を損ねるような表記はよろしくありません。


さて、そんな話をすると客様、


「落合けいこさんのファンとしてはそんな話を聞くと腹が立つわ!今、大病されて療養中(何も対応できない時)じゃないの。そんな時にこれを仕掛けるなんて心象は最悪!それに、この花を買うってことは知らないうちに片棒を担ぐってことじゃないの。花が穢れたように見えるわ」


知らないうちに片棒を担がされる。この意味は大きいと思いますし、この言葉こそがこのブログを書いている理由でもあります。


お客様、生産者、販売店・・・。一体どれほどの方に片棒を担がせる気なのでしょうか?多くの方に方々に片棒を担がせれば、それは既成事実となっていくのでしょうか?


答は否です。落合けいこさんご本人、そして落合けいこさんの八重咲きを知っている方がこの世にいる限りそれは成りえないことです。


「いえいえ、花に罪はありませんよ。そもそもこれは落合けいこさんの八重咲きなんですから」


「あ、そうか!こうすればいいのよ、このラベルを抜いてゴミ箱へ捨てて頂戴!ほら、これで落合けいこさんのところに戻ってきたわ!」


お見事でございます!お客様!!


本人の花は人が自分のものにしようとしても本人のもとへ還って来るものなのです。きっと!



と、言う訳で今年最後のブログは少々重いテーマで締めさせていただきました。


今年、一年ありがとうございました!


皆様にとって来年がよい年でありますように!!


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