雨、雨、雨・・・。もう結構でございます(笑)。
庭植えのスイセン、交配できません。パンジー・ビオラ、プリムラ交配して結実しているものにまでカビ。
通常は花弁にカビ、結実まで行ったらそこからカビることは少ないのですが、今年は未熟の蒴果までもかびています。
苦労して交配して結実もして途中でダメになるのを見ているのはかなり精神的にきついものがありますね。
薬剤はオルトランは使いますが、耐病性の選抜のために基本薬は撒かないことにしています。性質の面ではそれくらいしかできませんので。
対処としてカビた部分を取り除くのみですが、それが間に合わない。取り除いてもまたカビと今回はかなり強烈な選抜になりそうです。
数日前に平塚さんとも話しましたが、「年々気候変動のために採種が難しくなってきていると感じる」とのことでした。同感です。
種が少しでも採れれば、血は繋がりますのでそこのみに期待。ダメなものはダメで~す(笑)。
さて、交配結果の続き。今回はブロッチ覆輪を目指した交配。と、言ってもその精度を高めるための交配です。
ブロッチ覆輪とはブロッチが上弁にまで広がって覆輪になる模様。
作り出すのにはかなりの手間がかかりますが、その分そのは花は見事!工芸品のような花はパンジーの一つの美の極致です!!
画像は開花初期のもの。現在は連日の雨で実に哀れな状態です。
うず潮×黒潮
‘うず潮’は鈴木章先生作出のパンジーの銘花と言われているブロッチ覆輪の品種。
‘黒潮’は私の作出のブロッチ覆輪。先生のうず潮のあこがれて作出を試みたものです。
「うず潮」は入手したくてたまらなかった品種です。それが、とある種苗会社から生産者向けに販売されることになり、感激して注文したのですが、トラブルが生じた様で販売中止の連絡。残念でなりませんでした。
これで入手の道が絶たれたと思ったので、ならばと自分で作り出そうと取り組んで出来たのが「黒潮」です。
販売中止がそのきっかけになった訳でこれはこれでいいんですが、実はこの「うず潮」の件は終わりではありません。
生産者向けの分は販売中止だったのですが、個人向けに絵袋での通信販売があったのです。
生産者向けは中止なのに個人用は販売とはなんか変?!
実際播いてみると咲いたのは別の花。そう、この絵袋の中の種子は「うず潮」とは別のものが入れられていたのです。
絵袋に記載とは違う種子を詰めることは信用に関わる大問題。だって「偽装」ですから!
で、この種子を買って播かれていた一人がパンジー・ビオラ界の大御所、鈴木先生の直弟子の早野雪枝さん。
うず潮とは似ても似つかない花が咲いたことに憤慨して販売店に「これはうず潮じゃありません!」と苦情の電話を掛けたという・・・、これがいわゆる「うず潮事件」です!
偽装も大問題ですが、個人的にはこちらの方が大問題と思います。
だって、演歌界に例えると北島三郎御大を怒らせた様なもんですから。(笑)
で、これがおちあいけいこさんの「八重咲きもろパクリ事件」に繋がっているという展開が・・・。面白いですよね。
もし、これからパンジー・ビオラのついてのことを書かれる予定の方がいらっしゃいましたらこんなエピソード?も散りばめておくと面白い内容になると思います(笑)。
さて、閑話休題。
どちらの品種もある程度は固まっているんですが、更にブロッチの安定と株のまとまりを目指して交配しました。。
見てお分かりのとおり、上弁にブロッチを安定させるのが難しい。親株を厳選しても上弁にブロッチの入らないものが分離します。
ブロッチが出ても花弁近くまで大きく広がっていないと覆輪に見えません。また、そのブロッチと地色の境がぼけておらずはっきりとしている方が美しく感じます。
なかなか性質が固まらず、美の基準が多いので苦労するんですが、やっぱり苦労した分だけの花にはなります。(笑)
黒潮×うず潮
逆交配です。逆もまた真なりといいますが、可能性を探るためにも余裕があればやっておいた方がいいですね。
ほとんどの場合どちらを種子親にしても同じような結果になりますが、場合によっては違う結果になる場合もあります。
今回の場合は黒潮を種子親にした方がブロッチ覆輪はよく伝わったようです。
4番目の個体が最高ですね。
今後は2つの交配の最良の個体のセルフ、相互交配でそれぞれ系統分離していきます。そして、さらにそれらを組み合わせていく・・・。
何本もの糸を撚り合わせるようにして、ブロッチ覆輪を高めて行くわけです。