雨はひとまず止んだのですが、また週末は天気が崩れそうな予報。やはり季節の変わり目なんですね。見渡せばカンヒサクラや早咲きの桜が咲き始めています。ああ、早い・・・。
さて、何かと話題の‘ドリームワンダー’。
このすごさはやはり実物を見てもらわなければ分かりません。「実物はやっぱり凄い」と、見られた皆さんの感想です。
“焼ける”という本来は捨てれられる形質、悪しき形質を拾い上げて磨きをかけた物です。普通に見てもすごいのですが、金屏風の前に立たせると更にその姿に凄味が増します。
こんなパンジーの花なんて世界中探してもどこにもないでしょう。
「捨てられるものを拾い上げる」、「積極的にそこに美(価値)を見いだす」のは「侘び」、「寂び」と同じ美意識。
ですので、この焼けを利用するのは育種における“日本独自の技法”と言ってもいいでしょう。
つまり、この‘ドリームワンダー’を以てその技法が確立したのです。
後に続く私たちとしては、その技法を更に磨きあげ後代に繋げていかなければなりません。いわゆる伝統として。
ところが、この花(技法)のあまりの完成度の高さにどうアプローチしていいかわからない。
数名のブリーダーにも声かけをしたのですが、皆さんも同様。「(凄過ぎて)手が出せない」との返答でした。
完璧な品種なんてほとんどありません。多くの品種はブリーダーからすれば「こうすればもっと良くなる」なんてパッと思いつくものなのです。
ところが、このドリームワンダーは反対に他のブリーダーが尻込みしてしまうほどのもの。こう聞けばこの品種の凄さがよくお分かりになると思います。
誰もやらなければ私がやるしかありません。
そこで、一昨年‘ペニー・レッドブロッチ’と交配をしました。これも迷いに迷ってのこと。今考えると数ある品種の中で何故‘ペニー・レッドブロッチ’だったのかさっぱり分かりません。おそらくこの品種だったらドリームワンダーの雰囲気が壊れないような感じがしたのでしょう。
F1では無くなってしまったブロッチの焼けは、F2で僅かに出現。焼けがない個体でもセルフで採種していけば焼けが分離してくると思われます。
(その様子はこちら⇒http://ameblo.jp/pansy-tane/entry-11113047748.html#main )
で、一つ結果が出たことでためらいが吹っ切れたようです。昨年は笈川さんの‘ツタンカーメン’があったのでこちらを使って交配を行いました。
果たしてその結果はいかに?
ドリームワンダー・イエロー×ツタンカーメン
残念!焼けが消えています。と、思ったら・・・、
焼けが出ている個体もあるんじゃありませんか!!
ブロッチは小さくなっていますが、しっかりと焼けています。そして黄色も濃くなってレッドのぼかし覆輪もある。いい花じゃありませんか!
今年は育苗に失敗してこの交配は2株しかありませんが、やっぱり“焼け”使えそうです。もしかすると親株さえそろえば焼けのF1品種の育成が可能かもしれません。夢が膨らみます。
そして、もう1交配。これがまたいい・・・。
ツタンカーメン✕(ドリームワンダー✕ペニー・レッドブロッチ)
上弁の先に焼け、側唇弁にも焼けが入って色も濃いめ、唇弁が内巻でマイビオラのような花型になっています。これもいいですね。
“焼け”の技法、使えます。日本発祥の技法です。この技法を使ってどんどん日本にしかない花、日本人にしかできない花を作り出していきましょうよ!
グローバルスタンダードも大事だけれど、日本にしかないもの、日本人にしかできないものをもっといろんな分野で追究した方がいい。だって、日本人にしか出きないんですから!
たかがパンジーの花ですが、この焼けの技法で大きなことを思ってしまいました(笑)。