昨日は宮崎も強風が吹きましたが、春一番ではありませんでした。残念!!で、今日はまた冷たい雨です。
圃場の整理もようやく9割方済みました。と、言っても記録、種採りはこれからです。病気に侵された花、葉を摘んでいくのでいつにも増して時間がかかってしまいました。早くからっとした天気にならないかとそればかりを祈る日々でございます。
さて、またまた実践編です。今回はベイン(あみめ)。次回、山野草マニアックスの内容がこのテーマです。
「ベイン」は花の脈が黒く色付いて花弁全面に入る模様です。それはまるで「あみめ」のように見えます。
これまではストライプとも表現されていましたが、ストライプ(縦縞)とは明らかに違う模様なので近年は「ベイン」と呼ばれています。
この模様もブロッチ覆輪と共にパンジーの美のひとつの極点です。ただ、作出が面倒臭い(安定度)ので種苗会社はやりません。
ベイン品種で唯一出回っているのがビオラの‘タイガーアイ’です。有名品種ですね。
黄色~ブラウンの地に黒い脈が網目のように花全体に広がります。この模様は好みが分かれますが、関西圏では大人気です。阪神タイガースがあるからですね。
過去には‘ビュノッツ・スーパー・ブロッチュド’と言う名品のパンジーがありましたが、現在はわずかに系統保存されている程度です。とにかく、他にはベインの品種はありません。
ベインの目標は、まず‘ビュノッツ・スーパー・ブロッチュド’の復活です。大きい方が断然迫力があります。そして、バリエーションを広げなければなりません。
実はベインの育種は親株が揃えば割と簡単です。では、その親とはどんなものでしょうか?
まずは‘タイガーアイ’です。それも上弁にまでベインが広がった個体を選びます。
そして、もう一方の相手ですがこれも上弁にまでベインが広がったタイガーアイよりも大きなものが理想です。ってそれがあったら別に育種する必要ないでしょ?
はい、あるんですがないんです。フリルはあるのですが、タイガーアイのようなフラットはないのです。
ですから、ベインの場合はフリルからフラットへという普通とは逆方向の育種、選抜が必要なのです。そして、上弁にまでベインの広がる育種が必要なのです。
シャロンは上弁にまでベインの広がる個体を選びました。そうすると上弁にまでベインの広がる個体が多く出ますので、それを選抜していきます。親株が揃えばF1も可能です、きっと。
さらに大きくしたい場合にはもう一度、シャロンに戻し交配します。するとわずかながらも大きくなります。
シャロンが無い場合は‘フリズルシズル’、「絵になるスミレ」等の中にはベインが上弁にまで広がる個体がありますのでそれを使います。
更に大きくしたい場合には上記以外の品種がありませんので、とにかく大きなブロッチがある個体、その中に上弁にまでブロッチが広がる個体があればそれを使います。
この場合は側唇弁にはベインが出ても上弁が消えてしまうことがほとんどです。その中からベインの一番広がったものを選抜し、シャロンなどと戻し交配を繰り返していきます。
フリルは優性ですがフラットと交配するとフリルは弱まり、F2で様々なフリルに分離しますので、後はフラットのものを選抜していけばいいだけです。
古日々(こひび)(仮名)
[ストライプ3×(タイガーアイ×縄文)]の後代選抜です。いつも変な名前を付けますが、古い焼き物に入った“ひび”のイメージを当て字で表してみました。
ストライプ3はだいぶ前に藤田伸也さんから頂いたベインの個体。縄文は市販のシャロンから見つけたフラットなベイン。どちらもすでにありません。
イエロー~ブルーパープルの地色の幅がありますが、地色は薄い方がベインは見立ちますね。とにかくベインが全面に入った個体を選抜していってます。代を重ねるごとにだいぶまとまってきました。
今後はこの数系統内での交配選抜も行っていくとベストですね。
比較
左は‘タイガーアイ×エリザベス実生’、真中が‘古日々’、そして‘タイガーアイ’です。こう並べてみると大きさの違いがわかりますね。ベインがだいぶ大きくなりました。
もっと大きく、違う色で・・・、ベインもまだまだ可能性があることが分かります。